モロッコ旅行記~綺麗なお姉さん

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私怖いんです・・・

モロッコ周遊中世界遺産都市マラケシュで年上の日本人女性と出会いました。しかも何でこんな綺麗な人がモロッコに?という美人。まあでもマラケシュに来るのは分かります。ここは世界遺産の都市だから。でも意外だったのは彼女と出会ったのが、当時貧乏旅行中だった自分が泊まっていたゲストハウスだったことです。

彼女と出会ったのはそんなマラケシュの日も暮れ始めてきた夕暮れ時。彼女がホテルにチェックインしている時でした。フロントですれ違った時、あー綺麗な人だなーとは思いましたが話しかけられず、通り過ぎようとすると、彼女の方から、あのー日本人の方ですか?と突然話しかけられました。内心ビックリしつつ、ええ、そうですけど、と答えました。

一人旅の最中日本人に出会うとお互い話しかけ合うことはありますが、それはあくまでも同年代やもしくは女性を意識しない人が多かった。しかし彼女は、当時20歳の自分より年上で、綺麗なお姉さん、と言った感じのすらっとした美人でした。

正直思いがけないことで声が上ずっていたかもしれません。驚いていると彼女はもっと驚かせることを言い始めました。私怖いんです。ちょっと一緒にいてもらってもいいですか?そう確かに言われました。初対面の綺麗な女の人に。ビックリしながらも彼女をよく見てみると心なしかどこか怯えているような感じがしました。

これは何かあったなと思い詳しく話を聞いてみると、昨日滞在していた同じく世界遺産の街エッサウィラのホテルで、殺人事件に出くわしたとのことでした。しかも宿の従業員が客を殺したのだと。自分の泊まっているホテルでの殺人事件にショックをうけ怖くなって、すぐに近くの大きな街であるここマラケシュに移動してきたとのことでした。

しかしバスが遅れに遅れて到着したのは薄暗くなってきた夕方でした。当時日本人バックパッカーがほぼ全員持っていた歩き方に載っているホテルに行けば誰か日本人がいるのではないかと思い、このホテルを選んだとのことでした。そしてロビーで私と会ったから声をかけたということでした。

そんな一連の話を、宿の屋上がカフェになっていたので、そこで怯える彼女から聞いていました。つまりモロッコでの一人旅を満喫していたのは良かったのですが、恐ろしい体験を目の当たりにしてとにかく日本人と喋りたかったらしかったということでした。・・・まあそんなもんだよな、一目惚れとか、ドラマチックな出会いとか、そんな上手い話しないよなと内心落ち込みながらも彼女の心中は察するので、もう大丈夫ですよ、大変でしたね、とか何とか言いつつ、飯でも食いに行きません?と誘いました。

実は私は昨日カサブランカからここマラケシュに着いたばかりだったのですが、昼のジェマエルフナ広場前でぼーっとしていると日本人男性に話しかけられていました。同じく一人旅をしている同じ年の旅人でした。一人旅、同じ年と親近感も相まって、意気投合しホテルこそ違うが一緒にマラケシュ観光しようとなっていました。

その際に同じく休暇を使って旅行していた女の子2人組(ふとましい)とも知り合い、結局4人で観光をしていました。そして今日も皆で夕飯を一緒に行こうと約束していたのでした。怯える彼女のためにも大人数の方がよかろうと思い誘ってみたのでした。

すると彼女は目を輝かせて、いいんですか?と言うので、もちろん、と応えました。その夜モロッコのマラケシュという街で、奇跡的に出会った初対面の5人が集まり、広場の前にあったこじゃれたレストランでディナーとなりました。皆、何かこういうのいいよなーっていいながら。

しかしそんな楽しい時間も長くは続きませんでした。全員が全員時間にもお金にも限りのある旅人。しかも目的地が全員違いました。女の子2人組はカサブランカへ。同じ年の男の子はビーチへ。私は、砂漠の方へと。全員が綺麗に別々の方向を目指すことが分かりました。本当はこのまま全員で行動を共にしたい、でもそうすると誰かが我慢をすることになる。旅先での出会いの後は別れが必ずあることはバックパッカーの常です。皆本心では一緒にいたいのを隠しながらも、分かれることになりました。

そんな時ふと彼女はどうするんだろうと思いました。でも私はてっきり、女の子二人に付いてカサブランカに行くんだろうなと思っていたのですが彼女は私に、付いて行ってもいい?、と聞いてきました。私は内心驚きドキドキしながらも、もちろん、と応えました。気のせいか同じ年の男の子がにやにやしながら私に向かって親指を立てていたのが気になりましたが、そんなこと気にならなくなるくらい驚いて、そして嬉しかったです。

翌日同じ日に全員マラケシュを後にして違う方向へと向かうことになりました。私と彼女はワルザザートへ向かうことにしました。マラケシュからワルザザートはバスでおよそ5時間ほど。そのバスの中で私は彼女と話し続けました。自分のこと。彼女の事。彼女はイギリスで働いているらしいこと。そしてその休暇で来ていること。年が私よりも6つ上だということ。そして同じ愛知県出身ということ。

どうして〇君はモロッコに来たの?そう彼女から尋ねられました。その当時痛い中二病が爆発していた私は、サハラ砂漠に行けば何か人生観が変わる、本気でそう思い込んでいました。大自然に身を委ねれば何かが降りてくるのではないか?と。

今考えても黒歴史で恥ずかしい限りなのですが、当時はそう思い込んでいたので仕方ありません。さすがに彼女にそこまで言うほどの勇気はなかったので、ただサハラ砂漠を見てみたい、そう答えました。その答えを聞いて彼女は、そうなんだ、そう言っただけでした。

ワルザザートにつきホテルにチェックインしました。どうしようかとも思いましたが別々の部屋を取ることにしました。その夜一緒に夕食を取っていると突然彼女から、ごめん私はサハラ砂漠には行けない、そう言われました。やはりまだモロッコが怖いと。恐怖が消えていないと。

マラケシュで私と出会い、その繋がりで3人の旅人とも話し大分気が楽になった。でもやっぱりまだダメだと。だから迷惑かとも思ったけど一緒について行きたかった。そう彼女から言われました。そして、本当はもっと一緒に居て欲しいけど、そこまで迷惑はかけれないと。貴方にはやりたいことがあるんでしょ?と。

・・・いや正直そんなことはどうでも良かったんですけど。いくら中二病が爆発しているからとはいえ、綺麗なお姉さんの方が序列は上。そうは思いましたが、あまりにもシリアスで思い悩みながら話す彼女を見てると下半身を優先するような発言はあまりに軽いものになってしまうような気がして、それはそれで軽蔑されるんではなかろうかと思い何も言い返せませんでした。

彼女はワルザザートの後一人でフェズに向かい、そのままスペイン→ポルトガル→イギリスに向かうつもりだと言いました。何故あの時、じゃあ俺も一緒に行くよ、そう言えなかったのか。結局私に絞り出せたのは、そうか・・・の一言だけでした。今の自分であればもっと気の利いたことの一つや二つ言えて未来が変わっていたのかもしれませんが、当時の私には何も言えませんでした。

次の日、彼女と一緒に世界遺産アイト・ベン・ハッドゥの観光に出かけました。干し煉瓦の城塞都市で数々の映画のロケ地としても有名な観光地になります。が、正直内心は彼女との名残惜しさにそれどころではありませんでした。しかしそれを彼女に悟られると余計に気まずくなるかと思い表面上は楽しんでいるふりをしていました。

その日の夜の事。彼女との別れの前夜のこと。昨日と同じく一緒に夕食を取り、そして宿に戻り、明日の時間の確認をして部屋の前でおやすみと言い、お互い別々の部屋に戻りました。まあ人生何てこんなもんだよな、いいことないなー、なんて思いながらベッドの上で悶々としていると、部屋をノックする音が聞こえました。ドアを開けると彼女が立っていました。ちょっといい?彼女はそう言うと部屋に入ってきました。

・・・その日の夜のことはもう朧気なのですが、覚えていることと言えば、

シングルのベッドが二人ではせまかったこと

彼女が驚くくらい細くて白かったこと

脱がした服をどこに置いたら良いのか迷ったこと

彼女の体温がすごい熱かったこと

避妊具を持っていなくて焦ったこと

彼女がそれを見て笑いながら中に出したらダメだよと言ったこと

久しぶりだったのもあり早かったこと

そして猿の様に何回も彼女を求めたこと

今思い返してもあれは夢だったのではないか、そう思うくらい現実味のない一夜でした。しかしはっきりと覚えているのは、次の日バス停で彼女を見送ったこと。そして肌が弱い私に残った彼女の爪痕とキスマークだけでした。

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