ブラジルのサルバドールでの怠惰な日々その11

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そして翌日の朝。旅立ちの日。半年とはいえ同じところに住めば荷物も増えます。彼女と一緒に荷造りを済ませ、部屋を出るとサルバドールで一緒に過ごした友人たちが揃っていました。その一人ずつと握手をして別れを告げます。そして玄関には半年の間お世話になった宿主のJさんが待っていてくれました。

○○君がいなくなくるとさみしくなるな~

〉またどかで会いましょう!

そやなー

〉それではみなさんお世話になりました!!!

そう言って私はJ宿を後にしました。旅先での別れは何度も経験していて慣れているはず。しかし、何故か涙がこみ上げてきました。それだけサルバドールでの日々が私にとって身近で、当たり前で、そして大切なものだったのだと思います。J宿から空港までは彼女と二人きりで向かいました。皆が気を使ってくれて二人きりにしてくれました。空港に向かうタクシーの中では無言でした。何を話してもただ辛くなるだけでした。

サルバドールの空港には出発時刻の1時間半前近くに着きました。今回はチリのサンチアゴまでの飛行機の残りの時間も考えて、また財布の懐事情も鑑みて、サルバドールからブラジルとアルゼンチンの国境の町、イグアスの滝で有名なブラジル側の町、フォス・ド・イグアスまで飛行機で飛ぶことにしていました。そしてそこからは陸路でチリのサンチアゴを目指す予定でした。

出発時刻までかなり時間がありました。しかし当たり前ですが会話は全く弾みませんでした。隣を見ると悲しそうな表情をした彼女がいます。空港で何度このまま飛行機のチケットを破り捨てて、このままブラジルに残るわ、お前と一緒にいるわ、そう言おうと思ったことか。そして再びj宿に向かい皆に向かって、戻ってきちゃいましたー、そう言えば皆大盛り上がりするだろうな、そしてまた楽しい日々が続くのかなとずっと考えていました。

・・・しかし、そんなことはただの一時しのぎなことも当然分かっていました。そんな答えのない妄想を堂々巡りをしているうちに搭乗の時間が近づいてきました。こんな中途半端な気持ちで、その場の勢いや、テンションだけでこんな大事なことを決めていけない。そう冷静に、そして実はただビビっていただけなのかもしれませんが、私は飛行機に乗ることにしました。

最後の最後に彼女に・・・俺もう行くわ、そう告げた時、彼女は泣きながらキスをしてきました。しかし、行かないで、とは言いませんでした。諦めていたのか、それとも許してくれたのか。長いキスを終え、振りほどくように彼女から離れて搭乗ゲートに向かいます。

搭乗ゲートを抜け、中に進んで振り返ってみると彼女はまだ私を見送り続けていました。今ならまだ間に合う。まだ彼女のもとに帰れる。そう思いましたが、ビビりな私は戻ることができませんでした。そして一人飛行機の中で周りの人に泣いているのを悟られないために頭から毛布をかぶりました。

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