ブラジルのサルバドールでの怠惰な日々その13

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チリのサンチアゴに到着。間に合った・・・。本当に間に合ったぞ。強行軍過ぎてどこかで何かトラブルが起きれば間に合わななくてもおかしくないような日程でした。まさか本当に着いてしまうとは・・・心のどこかで、もし間に合わなかければ、飛行機に乗り遅れれば、ブラジルに戻れるのに!サルバドールの彼女のもとに戻れるのに!そう思っていました。

しかし着いてしまいました。いや着くことができました。3日で4千キロを移動するという強行軍だったためサンチアゴに着いた時は心身ともにボロボロになっていました。何より一刻も早く横になりたかった。そして思い切り寝た後、サンチアゴでの2日間はウニやカニなどのシーフードを肴にビールを浴びるように飲んで過ごしました。

そこで、そういえばバンコクに住む友人達にもうすぐバンコクに帰ることを伝えなければいけないということを思い出しました。およそ1年前、バンコクから南米に飛び立つ時に見送ってくれた友人達。早速、宿に併設していたネットを使ってメールを送ることにしました。するとすぐさま返信があり、しばらくチャット感覚でメールを楽しんでいました。

そして南米を出発する当日。およそ1年間過ごした南米を去る日。サンチアゴを出発する飛行機は夜に発でした。ここから懐かしきタイのバンコクまでは36時間の日程でした。チリからコロンビアとアメリカ、日本を経由してタイのバンコクまで。うんざりするくらい長い移動ですが、昨日のタイに住んでいる友人達とのやりとりでバンコクへの懐かしさも湧き出ていました。

バンコクに戻ったら、日本人の友人達とすぐに合流しよう。そして、思い切りタイ料理食べて、タイのビールを飲んで、夜遊びに行って、そしてエアコンの効いたタイ人の女友達の部屋に入り浸って・・・そんな日々が待っている。1年前のあの懐かしい思いを胸に飛行機に乗りました。

その時ふと思いました。あれ?俺今、サルバドールで別れた彼女のことすっぽりと忘れてた!あんなに感動的に感傷的になって、不法滞在してでもブラジルに残る選択肢も考えたくらい想った彼女だったのに!頭からすっぽり消えていました。これを文面だけで判断すると、私は何と最低な男なのかと思うかもしれません。しかし、一つ言い訳を聞いて頂きたい。

何度も言いますがブラジルは非常に治安の悪い国。日本では数年に一回あるかないかの事件、町中で銃撃戦、バスジャック、などが珍しくない治安。それがブラジルの現実。そんな深夜のブラジルの街に飛行機が到着し、大きいバックパック背負いながら半泣きで泊まれる宿を探し、その後連日で20時間を超えるバス移動。たった3日で4000㎞以上を走破する、そんな過酷な経験をしたことある人あまりいないと思います。

そんな極限の経験をすると人間自分のことしか考えられなくなる。前しか見れなくなります。後ろを振り返る余裕がありませんでした。まあそんなわけで、目の前に広がっているバンコクで出迎えてくれる友人達のことで頭がいっぱいになり、サルバドールの彼女のことは忘却してしまっていました。

もちろん彼女のことを忘れていたことを思いだしてからは、再度彼女を恋しく思いました。しかし、正直なことを恥を忍んで言うと、サルバドールの空港で彼女と別れた、自分の中で最高潮のテンション時と同じ想いかと言われると多少薄まっていることは否定できません。これは私がクズなのか、それとも同様の経験をすれば皆そうなるのか?今でも考えさせられます。

バンコク行きの飛行機が無事に出発して1年間の南米旅行が終わりを告げました。また来たいな。でももう来れないかもな。彼女とももう一度会いたいけど会えないかもな。こうして私とブラジル人の彼女との関係は終わりを告げました。