海外移住日記第16話 生きるために働く

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働きたくないけど生きるために働く

私が日本の会社を辞めてタイに渡った時、私にはわずかながら投資収益がありました。と言ってもアクティブに資産運用していたわけではなく、限りなくリスクを抑えて、石橋を叩いてもやっぱり渡らない、くらいのへたれ投資から来る利益。このようなことを書くと投資について聞かれることが多いのですが、正直私には何か特別な投資知識や技術があるわけではありません。その利益のほとんどがただただ運が良かった結果です。

かつてブラック不動産会社に勤務していた頃、私が見つけてきた不動産、そして会社がリフォームを手掛けた物件を自ら買い取ったことがあります。それは値段が手ごろだったということもありますが、そもそも私は若い頃から投資に興味があり、株、投信、FX、などを幅広くやっていたことが影響しています。

不動産業界に転身したのも、人生で一番高い買い物、と言える不動産。その一連の流れを仕事とは言え経験することは自分の金融リテラシーを向上することにもつながるだろう、そう当時の若くバカだった自分が考えたからでした。そういう経緯で私は自分で見つけ出した、まだマーケットに出ていない収益物件を購入することになりました。

社長から、どうだ買うか?そう冗談交じりに聞かれたので、私は思わず、買います、とそう答えました。思わぬ答えに社長はビックリしていました。おそらく社長は私にはお金がないから買えるわけがない、そう高をくくっていたのだと思いますが、当時の私は休みが全くなくお金を使う暇がなかったので貯金がありました。

通常であればケチな社長は社員の私達にも優遇をするなんてことはありません。しかし金欠が常だった私の元職場。その時もリフォーム会社司法書士事務所への支払いが既に2か月遅れているような状況でした。是が非でも今すぐに現金が欲しい。そう考えた社長は若干割引した金額でマンションの1室を売ってくれました。

時はあの思い出したくもない民主党政権時代。株価は今現在の半分以下。かつ円は超円高という暗黒の時代。そんな時代だからこそ安い捨て値のような金額で買えたのだと思います。日本、そして日本人全体には民主党政権時代は負の歴史ですが私にとっては不本意ながら恩恵となっていました。

それは名古屋市内のとある地下鉄駅にほど近い1ベッドルーム。表面利回り12%、実質利回り10%くらいでした。また不動産同様昔から持っているインデックス投信も、暗黒の民主党時代に買ったものになります。当時病んでいた私は、仕事が終わると人と関わるのを避け、ひたすら数字が揺れ動く株価や為替チャート、ひたすら文字が羅列している会社四季報などに逃避していました。

当時の日本株はどれも安く据え置かれ、地を這いずり周っていました。ドル円も今から考えると滑稽なのですが一部知識人が1ドル50円まで上がり、日本経済が崩壊するとの日本崩壊論が取りざたされていた時です。そんな時代だったからこそ株も為替も安く買うことができましたのです。

仕事を辞めてタイに逃避してきた時、この不動産と株と為替の収益が月に10万近くありました。生きていく、ただそれだけなら何とかなる微妙な金額になります。しかし年金をもらうにはまだ若すぎる。生活していくには少なすぎる。という訳でタイでも仕事を探すことにしました。

欧米の神様は働かずに楽園で遊んで暮らしています。しかし、私は日本人。日本の神様は人間と一緒に汗水流して働いている。そんな価値観が支配している日本人と日本の企業。当然、私の、もう働きたくないけど生きるために仕方なく働く、という不純な動機での就職活動は難航を極めることになります。