タイで一人の男の人生を狂わせた話

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タイで狂う

大学を卒業してタイに渡った時の事。私は当時カオサンのあるゲストハウスに泊まっていました。そこは日本人と西洋人が半々くらいの割合で泊まっている格安ゲストハウスでした。私はそこで何人かの日本人と出会い、日々の行動を共にしていました。

学生のバックパッカーが多い中23歳の私より年上の28歳の男性がいました。彼(以降T氏)は大手バイク販売会社を辞めてニュージーランドに英語留学のために大阪から上海に渡りそこから陸路でバンコクまで来ていました。

そんな時にバンコクでT氏と出会いました。5歳年上のT氏でしたが物腰が柔らかくおだやかな人でした。年下の私が言うのもおかしいのかもしれませんが丸坊主の好青年でした。

彼と出会った初期の頃は一緒に行動していた日本人グループに女の子がいました。そのため健全な夜遊び、近くの屋台でお酒を飲む、などばかりしていました。しかしその娘がイギリスに留学すると私たちの欲のタガは外れてしまいました。ある種バンコクの夜遊びのテンプレと言われるものは全てやりました。ゴーゴー、テルメ、お風呂、クラブなどなど。連日連夜遊び飲み明かしていました。

そんな中28歳で脱サラして夢や希望を胸に日本を脱出したT氏は次第に壊れていきました。壊れていったという言葉は無責任なのかもしれません。なぜならT氏に夜遊びを教えたのは他でもないこの私だったのですから。

彼と何回目かに飲みに行った時、私にだけ打ち明けてくれた話がありました。実はタイ人の女の子のペンパルがいると。そしてその娘に会うのが楽しみだと。しかし実際にバンコクで会ったところ実は彼女はお風呂で働く女の子でした。

彼女が風俗嬢だから悪いというわけではありません。やむに已まれぬ事情でお風呂で働いている女の子だっています。しかしその話を聞いて私は、あまり深入りしないほうがいい、そう彼に言いました。その先に幸せは絶対にないからと。早めに身を引いた方がいいと。

しかしT氏には届きませんでした。私もその彼女に会わせてもらったことがありす。確かに性格の良い娘でした。でもだからこそ地獄を見るのだと思いました。そして結果は案の定でした。T氏は彼女の仕事が終わる深夜に彼女と会う。そして彼女と遅い夕食を取り、彼女の部屋に行き一緒に寝る。初めは幸せそうにしていました。しかしそんな生活が長きませんでした。

T氏は彼女に言います。風俗なんかで働くな。彼女は言います。両親や兄弟姉妹を養わなければいけない。2人は毎日会うたびに喧嘩をするようになりました。そして喧嘩して仲直りしてセックスして。そして次の日には同じことをまた繰り返す。T氏も彼女も明らかにボロボロに壊れていきました。

当時私はタイマッサージの勉強のためチェンマイに行くことを決めていました。俺を置いていかないで下さいよ。T氏は5歳年下の私にそう言いました。だから言ったのに。心の中でそう独り言ちましたが、憔悴しきっている彼に言葉をかけることはできませんでした。

それから私は約3か月ほどの間チェンマイに滞在していました。チェンマイでの生活が楽しくバンコクでの日々を忘れるくらいでした。しかしある時ふと思い出しました。バンコクのT氏はどうなったのだろうと。そんな時T氏からチェンマイまで遊びに来るとの連絡がありました。

彼女がシンガポール人と結婚するかもしれない。数か月ぶりにチェンマイで再会を果たした後開口一番T氏は言いました。そしてここチェンマイに来る前にそのシンガポール人がお金を出して、彼女のために彼女の地元に作っている家に彼女と一緒に行ってきたと。

そこでは彼女の家を作っている大工や地元の人、彼女の親戚がT氏を彼女の旦那だと勘違いをして大歓迎を受け、パーティーになったとのことでした。T氏は私に、彼女とそのまま結婚しようかと思いましたよ、そう言いました。ちなみにそこは当時私がチェンマイで付き合っていた彼女が働く日本食屋でした。

そこの店でたまたまバックミュージックでかかっていたのが、サザンオールスターズの、逢いたくなった時に君はここにいない、でした。この歌の歌詞が当時のT氏の境遇と同じだったため、彼はその詩にしんみりと聞き入り、むせび泣いていました。そして結局彼は1週間ほどチェンマイに滞在してバンコクに戻って行きました。

T氏がおかしくなった。バンコクにいる共通の友人からそう連絡が入りました。何でも女遊びが激しくなり毎日違う女の子と関係を持っているとのこと。風貌も私とバンコクで行動を共にしていた時は丸坊主だったのが、伸びてきた髪をモヒカンにまず変えたとのことでした。そしてそれが最終的にそれが髪の毛をに染めてしまっていました。

また金遣いも荒くなり1000B(3000円ほどだが、日本人の感覚では1万円くらい?)を1000円くらいの感覚で使う。そしてその結果ニュージーランドに留学するための費用300万を1年で使い切ってしまいました。人間関係も荒れに荒れ、自分より年上、バンコクやタイに詳しい日本人を突然排除し始めたとのことでした。

そして最終的には携帯に入っている女の子全員に電話し、抱いてやるから部屋に来い、と暴言まで吐いたらしいのです。当然誰もそんな言葉には反応しなかったらしいのですが、そんな中唯一部屋に来てくれたのが一番最初の彼女だったとのことでした。どうしたの?と心配して部屋に訪ねてきてくれたらしいです。

私が実際の現場を見たわけではないのですが、結局ニュージーランド留学のためのお金をすべて使い込み、日本に帰ることになったのですが、最後の最後で彼はすっきりとした顔をしていたらしいです。それはまるで憑き物がとれたようだったと。

最後の最後でタイで一番最初に好きになった彼女と再会できたからでしょうか。その後彼をタイで見ることはありませんでした。

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