海外移住日記第19話 タイの不動産会社はかなりキツイ

Pocket

タイでの就職活動での失敗

私は日本に住んでいた時に不動産業界で働いていたことがあります。だから、という理由でタイでも不動産業界で働こうと思いました。しかしそれが大きな間違いでした。タイでは不動産屋はタイで食いつぶした人間の行きつく果て。詐欺師のようなろくでもない人間しかいない。などなど、さんざんな評価を受けています。およそまともな人間は働く業界ではないと。

もちろん全ての会社がそういうわけではありません。きちんとした会社ももちろんあります。しかし、一部すごい会社もあります。まあ、それは日本の不動産屋も同じことが言えるのですが、そんな日本のブラック不動産屋で働いていた私の予想を遥かに超えてくる不動産屋がタイにはあります。

日本で不動産業に7年ほど従事していた経験からすると、日本の不動産業界が特別進んでいるというつもりはありません。というよりも日本の不動産業界も世界的に見るとどちらかというといまだ伏魔殿の様相を呈しており、まだまだブラックボックスが多いです。そのため、不動産屋。不動産を取り扱う。この言葉を聞くと必ず、詐欺師、土地ころがし、などの悪いイメージが湧く人もいるかと思います。

しかし、これが欧米、特にアメリカとかになると全く別物になります。不動産を取り扱うエージェントの社会的地位は特別高く、それゆえそれに伴う信用と知識経験が必要とされています。それと比べると日本は比べようもありません。日本でも昨今宅地建物取引主任者宅地建物取引士と言う資格に名称変更し、士業の一つに格上げ?したわけですが、まだまだ内実は伴っていません。まさに、仏作って魂入れず、の状態になっています。

しかし、タイの不動産業界はそんな日本よりもさらに状態がひどいです。タイにはそもそも不動産に関する明確な資格がありません。そのため誰でもいつでも、不動産業を開くことができます。これにタイの不動産バブルが相まってまさにルール無用、詐欺師のような輩や、一攫千金を狙う良からぬ輩が跋扈しています。その数例をご紹介。

Y社。お試しで1週間いましたが典型的な体育会系不動産会社でした。社内では常に怒声が鳴り響いていました。まあそれは100歩譲って良いです。一番の問題はビザが降りないということでした。もうその時点で大問題なのですが詳しく話を聞いてみると会社で働き始めてから1年後にやっとBビザ、そしてワークパーミットが支給されるとのことでした。こんな会社論外だと思い1週間で辞めました。

もう一つはTホーム。こちらは社内の雰囲気はアットホームな感じではありました。ただこちらの問題は何といってもその薄気味悪いタイ賛美日本卑下でした。入社前にこの会社の従業員と共に飲みに行ったことがあるのですが、そこで話されている内容が実に気持ちが悪いものでした。

初めは日本人客に対する悪口でした。それはまだいいです。理不尽な客の愚痴を酒の席ですることくらい私にもあります。しかし、そんな極少数の客から日本人自体を評するのはいかがなものでしょう。彼らの言い分はこうでした。

日本人の駐在員はタイに来ると横暴になる。電球一つ自分で変えない。虫が出たくらいで我々(不動産屋)を呼び出す。すると同席していた一人の女の子(私と同時入社予定)が、駐在員になるとそうなるんですかね?そう尋ねると会社の副社長は言いました。”違う。これが日本人の本質だよ。日本人の本質はくずなんだよ”いやいや、お前も日本人だろ。大体、日本人を客として商売やっているのに何て言い草だ。

でも、ここまではまだ我慢していました。正直むかついていましたが・・・しかし、まだ話は続きました。そこから始まったのがタイ賛美と日本卑下でした。タイ賛美は別にいい。私たちはタイで住まわせてもらっている、働かせてもらっている立場。タイを下にみるつもりはないし、思うこともありません。しかし、それならタイを上げるだけでいいではないか。なぜそれと比較して日本を卑下するのか。

彼らは何度も、タイ人は有能だ。日本人は無能だ。10年後にはタイは先進国に。日本は発展途上国に落ちているタイ人は性格がよく、日本人は性格がくそだ。などなどタイ上げ、日本下げが延々と続きました。正直これには閉口しました。口を挟む気も反論する気もアホらしくなりしませんでした。

かといって私もいい大人です。こんなしょうもない話に、それは違う!と大きく反論して、その場の空気を壊したり、これから働く(その気はなくなっていましたが)会社の人間と喧嘩をしたくない、そう思い最終手段としてただただだんまりを決め込んでいました。しかしそんな静かな私を見て副社長はこう切り出しました。

”何で黙っているんですか。会話に参加しましょうよ。これから一緒に働くんですから私たちはもう家族なんですよ。家族はなんでも話し合わなきゃ。こんなチャンスないから話しましょう”正直ゾッとしました。何だこの気持ち悪い生き物は。本当に私はこの会社でこれから働くのか?いや働いていけるのか?その時は何とか苦笑いをしてその場を切り抜けましたが、宿に帰り、ベッドに入るとどうしても同じ言葉が頭を反芻します。

本当にあんな会社で働けるのか?あんな同僚と一緒にいられるか?考えすぎて考えすぎて吐き気がするくらい考えました。結果、その会社の内定を辞退することにしました。私はこの2社を実体験してタイの不動産屋での就労を諦めました。そして私のタイでの就職活動は振り出しに戻りました。