海外で危険に慣れておかしくなった話~ブラジル銃乱射事件

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サルバドールで銃乱射事件に遭遇

ブラジルは治安が悪い。そしてサルバドールも治安が悪い。偏見なのかもしれませんが、やはり黒人が多いところは治安が悪いのか?。しかし、およそ半年間黒人が多く住む町サルバドールに住んでいると良くも悪くもそんな治安の悪さにも慣れてしまってしまいました。今私は平和でのんびりとしたタイに住んでいます。今から考えると我ながらよくあんな治安の悪いところで無防備に好き放題暮らしていたなと思います。

そんなサルバドールではほぼ毎日どこかしらでフィエスタ(お祭り)が開かれていました。世界遺産にもなっているサルバドールのダウンタウンでも毎日どこかしかの店でパーティーが開かれ、店の外まで人が溢れ出し、皆ビール片手に楽しそうに踊っていました。

しかし、やはりなんといっても面白いのはローカルのフィエスタでした。ダウンタウンのように観光地化されたフィエスタでなく、まさにローカルの人たちが楽しむ本当のブラジルのフィエスタが味わうことができます。しかし、治安の良さと楽しさは反比例します。治安の良さを取るか、それとも楽しさを取るかの2択を迫られます。そして当時まだ若かった私は治安よりも楽しさを選びました。

そんなある夜。宿主のJさんに連れていかれたローカルなフィエスタでのこと。それは廃墟?になった幼稚園みたいなところで行われた大きなフィエスタでした。人の数は多く1000人近くはいたかと思います。初めは私を含む4人で行動していましたが、帰りだけ一緒に帰ろうと約束だけをして、途中から思い思い行動するようになりました。

ナンパなんて私の柄ではありません。しかし、いやらしい目的ではなくただ純粋にローカルな人たちに興味があり、つたないポルトガル語で何とか意思疎通をして楽しんでいました。そんな最中、突然乾いた銃声が鳴り響きました。そしてその直後に沸き起こる悲鳴。

と言っても私には銃声は聞こえていませんでした。私が聞いたのは、というか目にしたのは、周りにいた女の子が突然悲鳴を上げて近くの建物の陰に隠れたところでした。何何?と思いつつも、その時私は何がなんやらわからず悠然と椅子に座ってビールを飲んでいました。

周りを見渡すと気づけばのんびり椅子に座っているのは私だけ。それ以外の人は皆建物の陰に固まって避難していました。そんな私を見た近くの女の子がすごい形相をしながら、こっちに来い、と手招きをしてくれました。何事か?と思ったというよりも、女の子に呼ばれたから、という理由で彼女の近くに向かいました。

するとすぐに腕を掴まれ、早くこっちに来て隠れて!、的なことを言われました。何何?何事?何があったの?そう尋ねると彼女は何かを言いました。正直、何を言ってるのか分からなかったので、分からない、と答えると、彼女はわかりやすく指で銃の形を作ってくれました。そしてバンバンと。そして唯一聞こえたポリスという単語。そこでやっと理解できました。

おそらく悪い人と警察が銃を打ち合っている。その銃撃戦の音がしたため皆避難しているのだ。そして流れ弾に当たらないようにしているのだ。そしてそのことに気が付いていない日本人の私がボケっと一人ビールを飲んでいて危険だから手招きしてくれたと言うことが分かりました。

そのままの姿勢でどれくらいいたのでしょうか?おそらく30分ほどくらいだったかと思いますが不思議と恐怖とかはありませんでした。それよりも過去の危険な経験の時の様に、何か面白いことが起きている、という気持ちでした。これは話のネタになる、と思っていました。

そして・・・可愛い女の子と体を寄せ合っているこの状況に(違う意味で)ドキドキすらしていました。今から考えると異常ですが、当時は本当にそう思っていました。完全に危険に慣れ、麻痺していたのだと思います。むしろ女の子と密着して話せてラッキーくらいに思っていました。

しばらくして警察からもう危険はないとの通達がありました。皆ほっとして元の場所に戻っていきました。私はこれ幸いと自分を危険から救ってくれた女の子と親交を深めようと思っていたのですが、その矢先に日本人の友人が私を心配して探しに来てくれました。どうやら私以外の3人はたまたま近くにいたらしく3人で固まって固唾を飲んで見守っていたらしいです。

そしてそこで私がいないことに気づき心配していたとのことでした。普段ならばその心配はありがたく思うのですが、何もこのタイミングで来なくてもいいんじゃないかと思いました。当然ですが、人生で銃乱射事件に遭遇したのはそれが最初で最後になります。