人生のターニングポイント~ブラジルでマッサージ師になる?その2

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ブラジルのサルバドールにて。マッサージ師のブラジル人妻を持つ人と会ってから数日経ちました。正直、このままなし崩し的になかったことになればいいなー、そう思っていたのですが幸か不幸か連絡が来てしまいました。それじゃあ私の妻も会いたいと言っているから一度家に来て下さい、とのこと。今更その申し出を断ることもできず、お家に伺うことになりました。ちなみにその日本人男性は用事があり席を外しているとのことでした。

当日、指定された場所に行き、しばらく待っていると迎えに来てくれました。お互い顔を知らないのに本当に会えるのか心配していましたが、よくよく考えてみるとサルバドールに日本人はほとんどいません。そのため待ち合わせ場所に突っ立っている私にすぐに気が付いたとのことでした。

待ち合わせ場所で声をかけてきたのは、綺麗な小柄な黒人の女の人でした。美人でした。思わず、いいなーこんな綺麗な人と結婚できて、そう思ってしまうほどでした。そして軽いあいさつのあと家に連れていかれ話をすることになりました。家の中は何というかムーディーな家でした。

まあ。これはマッサージを仕事にしている人にありがちな趣味。どちらかというとアジアンテイストな内装になっていました。そこで改めて経緯の説明をすることになりました。仕方なくというと失礼ですが、私はマッサージ師で、マッサージで生計を立てており、ブラジルでもそんなチャンスがあればいいなあと思っています、くらいの軽い感じで自分の考えを伝えてみました。

すると彼女は少し考えた顔をしながら、、それは本気なの?と尋ねてきました。ここまで来て、いやー軽い冗談です笑、とは言えなかったので、はい、もちろん、そう答えました。そして沈黙。その沈黙に耐えきれず思わず、もしよろしければ私のマッサージを見せましょうか、タイマッサージと日本式のもみほぐしを組み合わせたものです。

どうせ断られると思いそんなことも言ってみたところ、本当?ぜひやって欲しい、そう言われてしまいました。用意するからちょっと待っていて、そう言われしばらく待っていると寝室に招き入れられました。こうして何故かブラジルのサルバドールで初めて会った綺麗なブラジル人の人妻に二人きりでマッサージをすることになってしまいました。

何なんだこの状況は?と言うよりさっき初めて会ったばかりの見知らぬ男に体を触られるのが怖くはないのか?それともマッサージをやっている人間は、自分を含めて、やはり皆ぶっとんでいるのか?そう軽く混乱しながらもベッドに横になった彼女の体をマッサージすることにしました。

とりあえず自分が得意とするベーシックな形である30分のマッサージ、うつぶせで頭から足先まで。そしてあおむけの首肩頭顔のマッサージ。旅行中はマッサージなどしていなかったため久しぶりのマッサージでしたが、まあうまくできたと思います。マッサージ終了後、彼女は本心からか社交辞令か、素晴らしかった、気持ちよかった、そう言ってくれました。

そして再び何か考えたかと思うと、下のリビングで少し待っていてほしいと言われました。15分ほどは待っていたと思います。マッサージの後はお通じがよくなることがあるため、トイレにでも行っているのか、それとも着替えでもしているのかな、そう思っていると彼女が2階から降りてきました。そして改めて彼女が話し始めました。

今私のマッサージの先生と電話で話しました。日本からマッサージの勉強をしに来ているマッサージ師がいる。彼はブラジルでマッサージの勉強をし、ゆくゆくはブラジルで働きたい。そう言っているが学校で彼の面倒を見れないか?と。

そう交渉をしてくれたとのことでした。しかし、よくよく聞いてみると、彼女が通っているマッサージの学校とは3年間通うしっかりとしたもの。観光ビザで入国している自分には到底通うことはできません。ということでもし通うとなると長期滞在ビザが必要になる、そう伝えると、その手伝いをすることはできるから心配ない。どうする?と言われました・・・なんか知らない間にずいぶん話が進んでしまっている。

いやいやちょっと待って下さい。そんな重大なこと今すぐにここで決めることはできません。ちょっと考えさせてください。ということでその場は辞去することにしました。彼女はわざわざ待ち合わせ場所のデパートのバス停まで車で送ってくれました。家に帰り、彼女からの申し出について考えてみます。さてどうする?

このままブラジルに残る?学校は?ビザは?本当に大丈夫なのか?今ならともかく昔のブラジルなら適当にことが運びそうな気もする。実際、そのときもそう思いました。このままブラジルに滞在するのも面白いかもしれません。そう考えると大変ありがたい申し出のような気もするが・・・

散々悩んだ結果、お断りすることにしました。やはり当時の自分にはそこまでの決意はできなかった。若かった(と言っても25,6でしたが)自分にはこのままブラジルに腰を据える、落ち着く決心がつきませんでした。しかし、今になって思います。もし、あの時へたれずにお言葉に甘えブラジルでマッサージを続けていたらどうなっていたのだろうか?

できるかどうかすら定かではありません。ひょっとしたらあの申し出自体社交辞令かもしれません。しかし、当時のブラジルは適当な国でした。大統領が交代する時に不法滞在している人に永住権?をくれることがある国でした。ひょっとしたらぬるっと通えたかもしれない。住めたかもしれない。そして・・・マッサージ師として働けていたかもしれない。

そして今頃は・・・美人ブラジル人妻が隣にいたかもしれません。ガラナの力を借りて子宝に恵まれ、サッカーチームが作れるほど家族が増えて・・・と妄想は膨らむばかりです。しかし、やはり人生にたらればは存在しません。でも、それでもやはり考えてしまいます。あの時ブラジルにマッサージ師として残ったらどんな人生になっていたのだろうと・・・。