ブラジルのサルバドールでの怠惰な日々その4

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サルバドールのスラムでの毎日はダウンタウンでの生活とは大きく違いました。ダウンタウンのように観光する場所は全くなく、ただただスラムに住む現地の人たちのリアルな生活、上半身裸、裸足で走り回る子供たちや歩き回るおじさん。タンクトップと短パン姿で踊るように歩く女性たち。真昼間から何をするでもなく日がな一日道端に座り屯っている若者、そこにあるだけでした。

初めはスラムということもあり緊張して暮らしていました。しかし、家主のJさんはサーファー仲間にこのスラムの家を紹介されて引っ越しをしてきてから3年近く不法滞在しているとのことでした。そのためこのスラムではかなりの有名人でした。それもそのはずローカル民しかいない、世界中どこにでもいる中国人も見かけないスラムで唯一のアジア人。

引っ越してきた初日。いきなり泥棒が入ったとのことです。しかし、その数時間後にその泥棒が盗んだものを返しにきたそうです。なんでもこの家を紹介したスラムの住人が、Jは俺のアミーゴ(友達)だ。だからJは狙うな、との連絡が回ったとのこと。それ以降Jさんがこのスラムで襲われることはなくなりました。

と同時に、J宿を訪れてくる日本人はすべてJの友達。ということはアミーゴのアミーゴ。日本人は全員アミーゴ。だから襲うな。どうやらそんなようなことになったらしく、スラムにも関わらず日本人にとって非常に安全なエリアとなっていました。そのことが分かってからは危険なはずのスラムが逆に好奇心をそそる興味津々な場所に変わりました。

当時、私達日本人にとってこのスラムはダウンタウンよりもはるかに安全でした。そのためダウンタウンでもできなかったようなことをこのスラムではできました。そして興味津々で毎日スラムの隅々まで歩きまわり探検をしていました。そして夜になると宿主のJさんが夜遊びに連れて行ってくれました。

遊び先は主にフィエスタ(お祭り)。そこでお酒を飲んで踊りまくりました。フィエスタ会場は地元のスラムのこともあればダウンタウンや違うエリアのスラムなど、色々なところへ連れて行ってもらえました。おかげでおそらく普通にブラジル旅行をしていたならば、およそ立ち入ることすらできないところにも行くことが出来ました。

しかし、だからと言って四六時中Jさんに付いて回るわけにはいきません。次第に自分一人でもスラム内を深夜遅くまで飲み歩くようになりました。そんなある日のこと。その日はスラム内のとあるバーで大規模なイベントがあると聞きつけ、夜の10時くらいに行ってみることにしました。

しかし、その途中、突然雨が降り始めました。もうあと100m行くか行かないかのところにバーがあったのですが、雨脚が強くなってきたので緊急避難としてバーの手前にあった、バーガースタンド兼オープンレストランみたいな店の軒先で雨宿りをすることにしました。しかしただ雨宿りするだけでは申し訳ないと思いハンバーガーとビールを注文することにしました。

この後、そこで出会ったウェイトレスとなぜか約半年間、半同棲することになります。