ブラジルのサルバドールでの怠惰な日々その11

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飛行機がフォス・ド・イグアスに着いたのは夜中でした。サルバドールを午前中に出発したのに着いたのが夜中ということは丸12時間は移動していたことになります。それもこれも一番の格安航空券を購入したため、ブラジル国内便でしたが乗り換えが2回あったためでした。しかも待ち時間が3、4時間ずつありました。

フォス・ド・イグアスでの宿は予約はしていませんでした。何度も言いますがブラジルは治安の非常に悪い国。日本やタイのように夜中ふらふら歩いていようものなら即襲われます。これはまずいと思い、空港にたむろしていたタクシーの運転手さんの中から、勘で人の好さそうな人を選び市街地まで乗せてもらい、ついでにホテルを探してもらうことにしました。

しかし時間は真夜中。どこのホテルもFULLと言われ断られました。これは本格的にまずいと冷や汗が出始めたころ、ようやく一軒のホテルに空きを見つけました。タクシーの運転手さんに多めにチップをあげそのホテルにチェックインすることにしました。そしてその日は心身共にへとへとに疲れていたのでシャワーだけ浴びて泥のように眠りました。

次の日の朝、朝食ビュッフェで軽い朝食を取り、早速国境を越えてアルゼンチンに渡りました。およそ半年ぶりのアルゼンチンでした。アルゼンチン側の国境の町プエルト・イグアスに着くと、そのままアルゼンチンの首都ブエノスアイレスまでの夜行バスのチケットを購入しました。

しかしバスが出発するのは夕方の4時。それまでの間、昼食を取り時間をつぶしバスの出発時間まで待ちました。プエルトイグアスからブエノスアイレスの所要時間は22時間でした。ほぼ丸一日かけて走ったバスはブエノスアイレスのバスターミナルに翌日の昼過ぎに到着しました。しかしブエノスアイレスからチリのサンチアゴまでの夜行バスは既に出発しており取ることが出来ませんでした。仕方がないのでその場で次の日のバスを予約し、その日はブエノスアイレスで一泊することにしました。

そして次の日の朝、ブエノスアイレスからチリのサンチアゴまでの20時間の夜行バスに乗り込みました。連日の20時間を超えるバス移動で疲れ果ててはいましたが、何より時間がありませんでした。そうしてこうしてチリのサンチアゴに着いたのが飛行機が出る日の2日前でした。

間に合った・・・。本当に間に合ったぞ。強行軍過ぎてどこかで何かトラブルが起きれば間に合わななくてもおかしくないような日程でした。まさか着いてしまうとは・・・心のどこかで、もし間に合わなかければ、飛行機に乗り遅れれば、ブラジルに戻れるのに!サルバドールの彼女のもとに戻れるのに!そう思っていました。

しかし着いてしまいました。いや着けました。3日で4千キロを移動するという強行軍だったためサンチアゴに着いた時はボロボロになっていました。何より一刻も早く横になりたかった。そしてサンチアゴでの2日間はウニやカニなどのシーフードを肴にビールを浴びるように飲んで過ごしました。

そこで、そういえばバンコクに住む友人達にもうすぐバンコクに帰ることを伝えなければいけないということを思い出しました。およそ1年前、バンコクから南米に飛び立つ時に見送ってくれた友人達。早速宿に併設していたネットを使ってメールを送ることにしました。するとすぐさま返信があり、しばらくチャット感覚でメールを楽しんでいました。

そして南米を出発する当日。およそ1年間過ごした南米を去る日。サンチアゴを出発する飛行機は夜に発でした。ここから懐かしきタイのバンコクまでは36時間の日程でした。チリからコロンビアとアメリカ、日本を経由してタイのバンコクまで。

うんざりするくらい長い移動ですが、昨日のタイに住んでいる友人達とのやりとりでバンコクへの懐かしさも湧き出ていました。バンコクに戻ったら、友人達と合流して、思い切りタイ料理食べて、エアコンの効いたタイ人の女友達の部屋に入り浸って・・・そんな1年前の懐かしい思いを胸に飛行機に乗りました。

そしてその時ふと思いました。あれ?俺サルバドールで別れた彼女のことすっぽりと忘れてた!あんなに感動的に感傷的になって、一時は、ほんとに一時ですが、不法滞在してでもブラジルに残る選択肢も考えたくらい想った彼女だったのに!頭から消えていました。

文面だけで判断すると、私は何と最低な男なのかと思うかもしれません。しかし、一つ言い訳を聞いて頂きたい。何度も言いますがブラジルは非常に治安の悪い国。そんなブラジルの街に、深夜に12時間掛かった飛行機が到着して、大きいバックパック背負いながら半泣きで泊まれる宿を探し、その後連日で20時間を超えるバス移動。そしてたった3日で4000㎞以上を走破する、なんて経験をしたことある人あまりいないと思います。

そんな極限の経験をすると人間自分のことしか考えられなくなる。前しか見れなくなります。後ろを振り返る余裕がありませんでした。まあその結果、目の前に広がっているバンコクで出迎えてくれる友人達のことが頭を占めて、サルバドールの彼女のことは忘却してしまっていました。

もちろん彼女のことを忘れていたことを思いだしてからは、再度彼女を恋しく思いましたが、正直なこと恥を忍んで言うと、サルバドールの空港で彼女と別れた、自分の中で最高潮のテンション時と同じ想いかと言われると多少薄まっていることは否定できませんでした。

これは私がクズなのか、それとも同様の経験をすれば皆そうなるのか?今でも考えさせられます。とにかくそうして私とブラジル人の彼女との関係は終わりを告げました。