海外移住日記 エピソード0

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バックパッカーのすすめ

私は学生時代バックパッカーをやっていました。しかし、元々は海外旅行なんて全く興味がないごくごく平凡な学生でした。英語も科目の中で一番嫌いでした。そんな私がバックパッカーになったのは、ほんのふとしたことがきっかけでした。それは当時同じアルバイト先にいた一つ年上の先輩がバックパッカーだったということ。

私は当時大学生でした。そしていっちょ前に普通に暮らしていることにうんざりして、退屈していました。そんな時に出会ったのがこの先輩。彼の生き方、バックパッカーとして海外を長期間放浪している姿が、当時の私にはとてもカッコ良く見えました。

ちなみにその先輩は大学を休学しており、バイトをしてお金が貯まったら海外に長期間出かける。そんな生活を繰り返していました。当時、海外に全く興味がなかった私は、そのような生き方をしている人がいることも知らず、ましてや実践している人も初めて見たのでとても興奮したものでした。そんな世界があるのだと。

そしてそれからというものその先輩の部屋に入り浸るようになりました。お酒を飲みながら旅の写真を見せてもらいました。そして先輩の海外放浪記に聞き入っていました。それはまるで私にとっての千夜一夜物語のようでした。そんなある日、突然先輩がバイトを辞めると言い出しました。そうお金が貯まってしまったのでした。

彼はこのお金をもって今度はインドとパキスタンに行ってくると言いました。何でもパキスタンにはジブリ映画”風の谷のナウシカ”に出てくる、風の谷、の舞台になった場所があるらしい。それを見てみたい。そう目を輝かせながら先輩は話していました。もう先輩の海外話を聞けないのかとー、と思わず私は言っていました。すると先輩は私に言いました。

そんなに海外に興味があるなら行ってみなよ。

〉いやいや自分には無理ですよ。英語も喋れないし。

中国だったら英語関係ないよ。

〉もっとダメじゃないですか。

関係ないよ。俺も英語も中国語も喋れないけど何とかなった。

〉俺には無理ですよ・・・

と言った感じでその日は先輩の部屋を後にしました。しかし、実は私の頭の中ではずっと先輩との会話が反芻されていました。自分一人で海外に行く?いやいや、無理でしょう・・・でも、できるって言ってたな。・・そんな会話が頭の中でずっと繰り返されていました。

それから数日後。先輩がバイトを辞める日。いつものように一緒に仕事をして、仕事終わりに先輩の部屋に行って飲むことになりました。そして先輩は私に、これもういらないからあげるよ、と言って一冊の本を渡してくれました。それは、地球の歩き方 中国、でした。

そうして、その数か月後、私は中国に行くことになります。まさかこれがきっかけでこの後の人生ずっと海外をふらふらすることになるとはこの時は思いもよりませんでした。