海外移住日記第4話 ブラック企業のノルマ

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ブラック企業の業務の実情とノルマとは?

前回お話しした、出社初日に行われた簡単なオリエンテーション。実際には全く役に立たない業務説明を受けただけで次の日から現場に行かされました。正直、はじめはとても緊張しました。あんな説明では意味が分からないし、何より関係者以外立ち入り禁止の建物に調査に行くことに。

現地では管理人の姿を見つけて引き返したり、昼休憩でいなくなったのを見計らって再調査したりと。その姿は傍から見ているとまるでコソ泥のようだったと思います。しかし悲しいかなやはり人間は慣れる動物。いつの間にか調査をすることにあまり緊張はしなくなってきました。

最終的には、いかに近隣の住人に見つからないように調査できるか、とまるでゲームを楽しむ様な心の余裕さえ出てきていました。おそらくこの頃から少しおかしくなっていたのだと思います。そう。ブラック企業でダラダラと働くことに慣れてしまいました。

ちなみに基本業務は、分譲マンションの空き室だけでなく、空き家空地古アパートも調査対象になっていました。しかし分譲マンションの空き室の方が空き家等に比べて商品にしやすく、また売りやすく、すぐに売り上げとして計上できるので、皆マンションばかりを調査していました。

分譲マンションに比べると一軒家の場合は、所有者との交渉や権利関係など、諸々の調整が多岐に渡ります。そのため商品として市場に出すまでの時間が、長期間に渡り、その期間に1年かかるとかざらにありました。もちろんその間売り上げは発生しないので、当然歩合は ゼロ になります。

ここで歩合に関する事情が関係してきます。まず面接時に言われていた、ボーナス・退職金が支給されない代わりに歩合率が良いと言われていた点。確かに歩合率は他の不動産会社に比べれば良かったのかもしれません。ただその歩合給が発生する最低ラインに誰も届かなかったのです。

この数字が入社して3年たっても 誰一人も到達しない数字 でした。私自身が数字に届かないだけなのであれば、自分の努力不足・実力不足なのか、と反省もするのですが、課長も含め社内全員到達できませんでした。果たしてこのノルマは本当に適切なのか?皆疑問に思っていました。さらにノルマは毎月キャリーオーバーしていくので、社員全員歩合給発生までのノルマが数千万単位に膨れ上がり、3年間誰も歩合給など発生していませんでした。

正直に言うと不動産の営業をしていて売り物さえあれば、不動産を”売ること”自体は対して難しくありません。そう売り物件さえあればしかし私達が入社した当時、会社には売り物件がありませんでした。正確に言えば、一般媒介契約物件を紹介はできるのですが、歩合給発生の条件に入っていませんでした。いわゆる不動産用語で専属専任契約物件の売り上げのみ、歩合給が発生する条件でした。

そういった事情もあり、皆次第に一軒家探しを敬遠しはじめ、未踏破のマンション調査エリアの奪い合いとなっていきました。はじめは市内を同僚と課長でエリア分けして調査していたのですが、すぐさま自分のエリアのマンションを調査し尽くしてしまい、外へ外へと調査対象が広がっていくことになってしまいました。

そして、その方針になぜか課長が激怒。同僚の一人と激しい口論となりました。後々分かったことだったのですが、課長は業務をさぼっており、物件調査をほとんどしていなかったようです。そのため、私たちが真面目に担当エリアを回り、課長の数倍のスピードでエリア一体調べつくしてしまっていることに焦りを覚えたらしく、さらに調査エリアを拡大することに猛反対したらしいのです。

そして・・・この一件からすぐに課長は社長に解雇されてしまいました。