ネパール旅行記10 日本のことを知らない日本人

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セブンイヤーズインチベットを見ながらの夕食が終わり、宿に戻ると食堂に数人の旅行者が歓談していました。前夜に一緒だったフランス人カップルもいたので、私たち4人もそこに参加することにしました。前夜はドイツ人考古学者による、アンコールワットの素晴らしさ、が話題に上っていましたが、その夜の話題の中心は、母国の文化、についてでした。

そこでそれぞれの国の旅行者が母国の素晴らしい文化や芸術作品について話をしました。またそこから映画や小説、詩人や作家、偉人の言葉や一節を紹介していました。さてそこで私たち日本チームの番となるわけですが、恥ずかしながら誰も何も言えませんでした。

日本の小説や映画の好きな一節ってなんだ?何かあるっけ?トンネルを抜けたら雪国だった、は?いや、それなんか違う。などなど正直誰も何も思い浮かびませんでした。そんな我々を見てひとりのフランス人紳士(おじいちゃん)が絶句。

なぜ日本には素晴らしい文化や芸術、作品があるのに君たちはそれを知らないんだ?学校で学ばなかったのか?本を読んだことがないのか?信じられない・・・と半ば軽蔑したように言われました。例えば・・・とそのフランス人の口からは、いろいろな日本の映画や小説、詩人の名前や作品名やその一節が出てきました。フランス人の私ですら知っているのに・・・と。

”他国の歴史や言葉や文化、芸術を知るのはいい。とても大事なことだと思う。でもそれはまず母国の歴史や言葉や文化、芸術を知ってからだと思う。それがなければミーハーな、ただの薄っぺらいだけの中途半端な人間が出来上がるだけだよ・・・”

そう説教ではないですが、優しく憐れみをもって言い諭されてしまいました・・・。正直情けなさで一杯でした。めちゃめちゃ恥ずかしかったです。自分たちの生まれた国のことをこんなに知らないなんて。そしてそれがこんなに恥ずかしいことだとは・・・。

確かに今学校によっては受験に関係ないからと日本史を学ばない学生が増えていたりします。またそれ以前に英語教育に力を入れるあまり肝心かなめの日本語がまともに話せない若者が増えていたりします。かくいう私も綺麗な日本語が話せているわけではないので、あまり大きな声では言えないのですが。

海外においては、まず母国のことを知らない人間は軽蔑され信用されません。どれだけ流暢に英語を話すことができても自分が生まれ育った文化や芸術のことを知らなければ、それはただの中途半端な人間だと、軽く思われるだけだということがよーく分かりました。

当時大学生だった私は、帰国後すぐに大学の図書館に入りびたり日本の歴史文化芸術を一から学び直すことにしました。



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