ネパール旅行記9 セブン・イヤーズ・イン・チベット

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ノリタケレストランでの楽しい昼食の後、皆で一旦宿に戻りまたまったりとした時間を過ごしました。既述のように何しろナガルコットにはすることがありません。先ほど同様思い思いに本を読みながら、気が向いたら話すという時間を過ごしました。

しかし、旅の解放感からか、相性が良いのか、ナガルコットがそうさせるのか、特に無言の空気でも居心地の悪さなどはまったくありませんでした。むしろその空気感は居心地よく、まるで10年来の友人との完徹の飲み会からの喫茶店のモーニングでのひと時のようでした。

そんなまったりとした時間を夕方まで過ごし、ナガルコットでの2大することの一つ、夕日の時間になりました。皆でビュースポットまで行き、遠く夕日に染まるヒマラヤを鑑賞しました。

お腹一杯沈む夕日を堪能した後は、皆で夕食を食べに行くことになりました。そこで私たちはあるレストラン、というより食堂みたいなものを昼間に見つけていました。それはノリタケレストランからの帰り、宿に帰る道とは別の道があったので散歩がてら歩いているときのこと。

食堂というよりも普通の民家のようなたたずまいなのですが、表に看板らしきものがありました。そしてその横には”セブン・イヤーズ・イン・チベット 19:00”みたいな記述もありました。ひょっとしたらこれはセブン・イヤーズ・イン・チベットを19:00から見れるということか?

そう気になっていたところがあったので、ダメ元で行ってみようという話になっていました。19:00からとなっていたのでその15分くらい前に店?家?に向かい中に入ってみると簡素な食堂みたいな作りになっていました。

いらっしゃいませ

>えーと看板を見て来たんですけど?映画見れますか?

はい。どうぞ

>あー、食事ができたりしますか?

はい。これメニューです

メニューとして書かれたものはどれも簡単なものばかりでしたが食事はできるようでした。やはり私たちが思った通り食事をしながら映画を見ることができるようでした。ネパールでセブンイヤーズインチベットを見る、か。中々風情があるなー。そう思いながら適当に料理と飲み物を注文しました。

セブンイヤーズインチベットとは、1997年に公開されたブラッドピット主演のハリウッド映画です。ちょうど私がネパールに滞在していたころくらいに公開されていました。当時ごりごりのバックパッカーでネパール、チベットに憧れていた私は当然この映画は鑑賞済みでした。

1939年秋、登山家ハインリヒ・ハラーは世界最高峰ヒマラヤ山脈への登山に向かった。時悪く、第二次世界大戦のためにインドでイギリス軍の捕虜となってしまった彼は脱獄し、チベットへと行き着く。チベットの首都ラサで生活をしていたハラーは、当時14歳で好奇心旺盛なダライ・ラマ14世と出会い、親しく交流する。ラサでの日々がハラーの荒んだ心に変化をもたらした。しかし、その生活も中国共産党の人民解放軍によるチベット国への軍事侵略によって終わりを告げることとなるのだった。

wiki

映画の内容は中国政府がひた隠しに隠しているチベットでの真実が生々しく描かれています。そのため公開直後は中国政府が以下のような対応を取ったことでも知られています。

『セブン・イヤーズ・イン・チベット』の公開後、中華人民共和国政府は、映画の中で紅軍の士官が意図的に無礼で傲慢な人物として描かれている、また紅軍兵士がチベット人に対し虐殺したかのような演出がされたとして強く非難した。このため『セブン・イヤーズ・イン・チベット』は中国で上映禁止となった(言論統制)。また、映画の監督および主演者のブラッド・ピット及びデヴィッド・シューリスは中華人民共和国支配地域への立ち入りを無期限で禁止された。中国に入国できなかったため、映画の大半はアルゼンチンで撮影された。しかし映画の公開から2年後、監督ジャン=ジャック・アノーは2名のクルーが中国支配下のチベットに潜入し、一部の映像を撮影していたことを明らかにした。中国政府の強い反応にもかかわらず、ジャン=ジャック・アノーは映画に20分ほどのチベットで撮影された映像を加えていた。また、一部の映像はチベット近隣のネパールで撮影された。

wiki

この映画を公開した食堂の主人の意図は何だったのか。ただ単に当時ヒットしていたからとか・・・深い意味はなかったのかもしれません。しかし、やはりチベットと関係も歴史も深いネパールの地でこの映画を見ることはかなりの衝撃がありました。

今なお中国はチベットでの虐殺行為や現在進行形で行われている民族浄化を認めていません。慰安婦や南京事件のようなねつ造とは違い、完全な歴史的事実なのにも関わらずです。もちろんこのころはそんなことは思っていませんでしたが、このチベットに関する事実が現在の私の中国観の元になっていると言ってもよいと思います。

そんなわけで映画を鑑賞して皆心に何やらもやもやしたものを抱えながら宿に帰ることとなりました。



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