海外に住んでいた時に経験した命の危険~チェンマイの殴り屋

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タイ北部の静かでのどかな都市チェンマイ。私は過去この町に2年ほど住んでいたことがあります。今回は前回に続きチェンマイで遭遇した危険な体験その2。

チェンマイの殴り屋

日本は世界的に見てもトップクラスで平和な国になります。私が今住んでいるここタイも暮らしていれば平和なところなんですが、タクシーの運ちゃんは銃を持っている、だの、華僑系の富裕層のボンボンが好き放題暴れている、だの、ネット上には真偽があやふやなものが実しやかにささやかれています。

そんな中私が実際にチェンマイで体験した出来事。当時、今から10数年前チェンマイには日本では考えられないくらい身近に、殺し屋、と言われる人たちがいました。まあ実際に見たことはないのですが、いるという話は聞いていました。

当時チェンマイで働いている日本人の友人が、取引先のタイ人とはできるだけもめたくないと言っていました。何故ですか?と尋ねると、ここでは3万バーツ(約10万円)で殺し屋を雇えるからだと。

えー、本当ですか!?と驚いていると、まあ殺し屋まで行かなくても、殴り屋はもっと安い値段で雇えるよと彼はそう教えてくれました。殴り屋とは読んで字のごとく依頼人からお金を受け取り、相手を殴りに行くことを仕事としている人たちです。

そんな殴り屋に殴られた話

pingriver

ある日私はレストランで働いている知り合いの女の子から年末の年越しパーティに来ない?と誘われました。特に予定もなかったので誘いに乗りお店に行きました。年越しのカウントダウンが終わり、店の営業が終わったので帰ろうとすると、このままパーティをやるので残っていてと。

他の客が帰り片づけられていく店内の中、私が座っている席には大量の飲み物と食べ物が、次々と並べられていき仕事が終わったスタッフが順に席に着席していきました。その店は川沿いになるオープンな作りの雰囲気の良いレストランだったのですが、さらに店内の照明を落とし、テーブルのキャンドルのみが仄かに灯るという、ムーディーな演出の中レストランスタッフの打ち上げ・飲み会が始まりました。

その後いろいろなスタッフが出たり入ったり帰ったりして最終的には、男二人、女4人の計6人が残りました。もちろん自分以外全員タイ人です。6人掛けのテーブルに3人ずつ。男を囲むように座っていました。そんな席の私の目の前にはタイ人の男性がおり、隣の女性と肩を組んでいました。

その時は、ああー恋人同士なんだないいなーとか思っていました。そのまままったりとお酒を飲み続け時刻は朝5時くらい。ちょうど夜が明けてきた頃、突如入口の方から声が聞こえてきました。私は入口に背中を向けて座っていたのですが、あれー、だれか店の人戻ってきたのかな?くらいに思っていました。

しかし私の真向いに座っていた女の子が突然、誰っ!と悲鳴をあげました。ん?と思い振り返ると同時に突然頭に激痛が走りました。それからはもうしっちゃかめっちゃかでした。テーブルやイスがひっくり返され、女の子たちの悲鳴が上がり、襲い掛かってきた男たちの怒号が聞こえ、気づけば私は4、5人の男に囲まれ、殴る蹴るの暴行を受けていました。

しばらく殴られ蹴られされていると遠くの方から女の子の悲鳴と、違う!この人は日本人だから関係ない、という叫び声も聞こえてきました。その声が聞こえたとたん攻撃が止み、私は女の子2人に助け出されました。そしてそのままレストランの事務所まで引きずられそこで彼女たちの介抱をうけました。

その時真っ先に思ったのは、痛いとか怖いとかそう言うことではなく、一体何なんだ。何が起こったんだ。正直頭の中にはでいっぱいでした。女の子たちは私の顔を見るなり、ごめんなさい、ごめんなさいと泣きながら謝ってきました。その涙の謝罪を聴きながらも、ん?何が?だと。一体何に謝っているんだ?一体どうゆうことなんだ?謝罪はいいから説明してくれ、そう言ったのですが、女の子たちは泣くばかりで何も説明してくれませんでした。

そんなことより背中痛くない?と彼女が聞くので、いや全くと答えると、でも背中見てと言われました。ん?と背中を鏡越しに見てみると血でシャツが真っ赤に濡れていました。アドレナリンが出ていたのでしょうか?全く痛みは感じませんでしたが、どうやら背中が切れていたようでした。

おおう!本当だと思っていると、外の喧騒が静かになりました。ということで外に出てみると、店の中は荒れ放題になっておりテーブルやイスがそこら中に散乱していました。そしてもう一人いた男の人が全身血だらけ、上半身服がびりびりの状態で、何やら怒鳴りながらどこかに電話をしていました。

何だこの状況は?と思いつつ彼に近づくと、おい!日本人体は大丈夫か?と逆に心配されました。いやいや俺なんかよりお前のほうがよっぽど重傷だろと。お前こそ大丈夫か?と尋ねると俺は大丈夫だと。いいからお前は病院行けと言われました。

そんなやりとりの後女の子たちに無理矢理病院救急病院みたいなところに連れていかれました。当時貧乏滞在をしており病院のお金を払いたくなかったので行きたくなかったのですが、無理やり連れていかれたので仕方なく傷をみてもらうことになりました。

診断の結果、背中の裂傷で8針縫うことになりました。仕方なく治療を受け、お金を払おうとすると、貴方は払わなくてもいいと。私たちが払うと言われました。貴方のケガは私たちのせいで貴方は関係ないのだからと。確か金額的には2000Bほどだったと思いますが女の子が払ってくれました。薬を待っている間に、もう謝らなくてもいいから事情を教えてくれ、そう彼女達に問いただしました。すると女の子がぽつりぽつりと一連の顛末を話してくれたました。

実は店にいたもう一人の男性とその隣でいい感じになっていた女性は、最近恋人同士になり付き合い始めたばかりらしいのです。しかしその女性の元カレがストーカーのようになっており、今回その元カレが殴り屋を連れてお店に襲撃に来たらしいということでした。

しかしその日店内はムードのある雰囲気にするために照明を消して、テーブルの上のランプのみが仄かに灯って薄暗い状態でした。しかもその時私は店の入り口に背中を向けていました。殴り屋からすると、どうやら男は店に二人いる。が、店内が暗くて標的の男がどちらなのか判断できない。だったら両方ともやってしまえ、という感じでおそらく私は襲われたのだと。つまり私は不運にも、巻き添えを食らって、間違いで、襲われたということでした。

・・・そういうことか、と。だから女の子たちも私よりもはるかに重傷なもう一人の男性も私のことを心配をしていたのかと。しかし不思議とその彼や女の子たちに対する怒りとかはありませんでした。病院の後そのままその女の子達に宿まで送ってもらいました。宿に着いた頃にはすっかり朝になっており7時くらいになっていました。背中が血だらけの私の姿を見て宿のフロントはびっくりしていましたが、私と言えば凱旋した将軍のように何故か意気揚々と赤いシャツを見せびらかせていました。

いやーさっき襲われてさーなんて言いながら。知り合いの女の子たちは最後まで申し訳なさそうに、そして心配していましたが、当の私としては、8針縫ったとはいえ、それ以外に体に別状はないし、何か取られたものがあるわけでも、壊れたものがあるわけでもなかったので、心の中ではいいネタができた、早くこのことをメールで一斉送信しよう、などと思ったりして、気楽なものでした。

それよりも人生で初めて襲われた、そして修羅場に遭遇したことでテンションが妙に上がっていました。そんな私は女の子たちは不思議そうに気味悪そうに見ていました。若かったからか、バカだったからか、当時は笑い話にしていましたが、今から考えると中々の事件に巻き込まれていたのだと思います。