海外移住日記101話 シラチャはダメ人間製造機

Pocket

シラチャの困ったお客達。日本からタイに移り住み、タイのサービス付きのアパートに住み始めると日本との生活の違いに驚かされると思います。もちろん中には日本の常識を持ったまま生活し続けれる人もいるにはいます。しかし、ほとんどの人はその変化に流され、日本的な常識を忘れてしまう人がたくさんいました。

私がかつて働いていたシラチャのお客たちにもそのような人が大勢いました。タイでの生活や価値観、毎日に慣れてしまって果たして日本に帰った後まともに生活していけるのだろうか?他人事ながら心配になってしまいました。

タイに赴任してくる人たちに人気な不動産にサービス付きのアパート、いわゆるサービスアパートメントと呼ばれるものがあります。もちろん家賃やクラスによってサービス内容は上下しますが、いわゆるメイドサービスやエンジニアサービス、通訳やコンシェルジュ(日本人)付きのものもあります。

しかし、いくらサービスの中に入っているとはいえ、そのような生活に(庶民が)長く浸って良いことなんて、楽だということを除いて、おそらく一つもないと思います。いくらサービスに含まれているからと言って自分でコップ一つ洗わなくなるというのはいかがなものでしょう。そうしてタイでの生活が長い人は皆が皆まるで小姑のようになっていきます。

メイドが掃除をきちんとしない、洗い残しがある、電球やトイレットティッシュの交換、飲料水の補充、荷物の運搬、風呂場のちょっとした黒ずみの掃除、果ては部屋に虫がいるから何とかして、電気、エアコンがついていない(すぐ近くにスイッチやリモコンあり)などなどのワガママが当たり前となります。

育ての親が聞いたら激怒しそうなことを平気で言ったりします。やはり環境が変わると人間というのはこうも変わってしまうのかと思い知らされます。彼らはまるですべてやってもらって当たり前、王侯貴族のようなふるまいをするようになります。

私が耳にした一番衝撃的だったのは、幼い子供がちょっとそこまで(数百メートル)歩くのを嫌がる、というのを聞いた時でした。なんで歩かないといけないの?車は?そう言っているのを見て愕然としました。

短期間の旅行の一流ホテルであれば、ほんのつかの間の非日常感が味わえてよいと思います。または本物のセレブや王族などなら分かります。ずっとそんな生活をしていた、そしてこれからも続いていくような人たちなら。しかし、私が今まで見てきたのはそんな特別な人ではありません。いわゆる富裕層というわけではありません。

彼らはごくごく普通の人たちで、たまたまタイに赴任してきただけ。物価が安いタイに赴任してきて会社から家賃補助が出ているから住めているだけです。このようにすべてしてもらって当たり前の生活を数年単位で送っていた人たちが、そんな生活に慣れてしまった人が、再び日本に帰っても大丈夫なのか?

日本では当然自分ですべてしなくてはいけない生活が待っています。そんな当たり前の日常に果たして戻ることができるのだろうか?そのギャップに苦しむのではないのか?またそんな幼少期の生活を過ごした子供はまっすぐ育つのか?

思わず、戦争帰りの兵士が平和な日常になれることができず心を病んでしまう、そんなテレビのドキュメンタリーを見たことを思い出してしまいました。他人事ながら、そんな彼らがいつか日本に戻った時に昔の生活、自分で自分のことをする、そんな当たり前の生活に戻れるのか心配になりました。