私はひょんなことからユーゴスラビアのベオグラード駅で話しかけられたおじさんの家に行くことになってしまいました。子供でも知っています。知らないおじさんに付いて行ってはいけないということは・・・今から考えると何であんな無謀なことができたのか・・・今だったら絶対あんなことはしません。しかし当時はよほど選択肢のない絶望(大げさ)を味わっていましたました。
これは個人的なことなのですが、どうやら私には完璧にスケジュールを全うしたい性癖?性質があるようです。しかしその事前に立てたそのスケジュールが崩れると一旦放心状態というか、軽度のパニック状態、というと大げさですが、根本にあるネガティブが爆発する傾向があります。そのため普段なら絶対しない、知らないおじさんについていくという選択肢を選んだのだと思います。
そんなまさに藁をも掴む思いで知らないおじさんに付いて行ったわけですが、その結果はというと・・・普通に良いおじさんでした。まあ、今こうやって能天気に過去の日記を語れているくらいです。特に何も問題なく過ごすことができました。
ちなみにおじさんの家は結構遠く、ベオグラード駅から1時間はトラムに乗ったと思います。しかし体感は数時間は移動したような感覚でした。まあ同じ道のりでも行きの方が初めて見る景色のため、帰りより体感は長く感じるといいます。それよりも何よりも、仕方ないとはいえ、知らないおじさんについていく不安も影響していたのだと思います。
着いた先は日本でいうUR住宅みたいな団地のようなところでした。正直怪しさ100%でした。やっぱり失敗したか・・・この時点でもかなり後悔をしていました。引き返すならここでした。しかし、ここまで来たら仕方がない。毒食わば皿まで。そう思いおじさんの後に付き従い部屋に入りました。
すると中には・・・タトゥーがばっちり入った5~6人の黒人とジプシーみたいなおっさんの姿がありました。はい。やられた。このまま身ぐるみはがされるの?オカマ掘られるの?いや殺されるの?そんな考えが頭によぎりました。お父さんお母さん先立つ不孝をお許しください。
そんな私の絶望した表情を見て取ったのかおじさんは、大丈夫。大丈夫。彼らもあなたと同じお客だから、と言っていました。しかし、そんな言葉は耳には入ってきませんでした。そしてなぜかむしょうに母親に会いたくなりました。
おじさんは続けて、大丈夫。怖くないよ。ここはプライベートユースホステルだ。そう笑って言ってくれましたが、私にとってはこれが黒人とのファーストコンタクトでした。そのため正直私の顔は引きつっていたと思います。おじさんはそんな私に色々と話しかけてくれました。
ようこそユーゴスラビアへ
>は、はあ・・・
どこから来た?
>・・・日本人
一人で旅行をしているのか?
>うん。
すごいなー一人旅なんて
>いや、それほどでも
これからどこに行く?
>北上しようかと・・・
そんな明らかに私に気を使って話かけてくれるおじさんを見て私も大分落ち着いてきました。どうやら悪い人ではなさそうだ。しかし、そこでふと気づきました。そう言えばこのおじさんに払うお金を持っていない。どうしよう?