ヨーロッパ横断旅行記39 スペインのトマト投げ祭りが始まる

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トマト投げ祭り。しかし、そのはじまりはダラダラしたものでした。まずは10時ごろから小規模な水の掛け合いが、そこここで始まりました。というか今でもよく分からないのですが、あれはそもそも始まりだったのか?これ?何?いる?みたいな感じでした。当時タイのソンクラーンやインド・ネパールのホーリーを経験していた私にとっては、その水の掛け合いはただのじゃれ合い程度のものでした。

そのため初めこそ真新しさもあり楽しかったものの、そんなことがしばらく続くと、いったい何だこれは?これがトマト投げ祭りか?と次第に退屈になってきてしまいました。しかし、本当の祭りはいきなり始まりました。突然どこかで大きな爆発がしたかと思うと遠くのほうから大量のトマトを積んだトラックがやって来るのが見えました。すると皆が一斉に狂喜乱舞し、トラックの方へ走り出しました。そう、それこそトマティーナの本当の始まりでした。

そこから先はもう・・・まさに地獄絵図でした。楽しむ?そんなことはとてもできませんでした。もう無我夢中でした。とにかく必死でした。四方八方から飛んでくるトマト、それに耐えつつ、転ばないようにしっかりと地面を踏みしめ、自分に攻撃してくる相手に対して、少年野球で培ったスローイングでトマトを機械的に投げ返す。この繰り返し。

確か事前に仕入れた情報では、トマトは潰して投げるのがマナーと聞いていました。しかし、そんなものを律義に守っているのは礼儀正しい日本人の私くらいでした。皆普通にそのまま投げていました。それはまるで軟球の球が当たったくらいの衝撃。それが絶え間なく体のどこかに走っていました。

・・・ふふふ。ははは。そうか。そういうことか。よーし、そっちがそのつもりならこっちもやってやるぞ。そう開き直るのに大した時間はかかりませんでした。そうして気づけば、私もトマトを潰すのをやめて、そのままカチカチのトマトを相手に投げ続けていました。始まってほんの数分。周りの誰もが(自分も含めて)理性が吹き飛び、キレて、雄たけびを上げながら、訳も分からずトマトを投げていました。


A20 地球の歩き方 スペイン 2018~2019