次の日、彼女と一緒に世界遺産アイト・ベン・ハッドゥの観光に出かけました。アイト・ベン・ハッドゥとは、干し煉瓦の城塞都市で数々の映画のロケ地としても有名な観光地になります。が、正直内心は彼女との名残惜しさにそれどころではありませんでした。しかしそれを彼女に悟られると余計に気まずくなるかと思い表面上は楽しんでいるふりをしていました。
その日の夜。21時頃、近くのレストランで最後の食事をしに行きました。そう明日は彼女と別れなくてはいけません。夕食を食べた後、散歩をしながら静かなワルザザードの夜の町を歩きました。今では、ひょっとしたらそんなことはできないのかもしれませんが、当時のモロッコは夜遅くフラフラ歩いていても何も恐怖は感じない、とても平和な国でした。
そして、星が綺麗に見えるから、という理由で町のはずれにある噴水のヘリに腰掛けることにしました。出会ってから語り合うことが多く、もう話すことはないかと思いましたが、気づけば12時近くまで時間を色々なことを話して過ごしました。
その後宿に戻り、明日の集合の時間の確認をして部屋の前でおやすみと言い、お互い別々の部屋に戻りました・・・まあ人生何てこんなもんだよな・・・いいことないなー、なんて思いながらベッドの上で悶々としていると、部屋をノックする音が聞こえました。
ドアを開けると彼女が立っていました。ちょっといい?彼女はそう言うと部屋に入ってきました。そして・・・その日の夜のことはもう朧気な記憶になりますが、そんな中、覚えていることと言えば・・・
シングルのベッドが二人ではせまかったこと
彼女が驚くくらい細くて白かったこと
脱がした服をどこに置いたら良いのか迷ったこと
彼女の体温がすごい熱かったこと
避妊具を持っていなくて焦ったこと
彼女がそれを見て笑いながら中に出したらダメだよと言ったこと
久しぶりだったのもあり早かったこと
そして猿の様に何回も彼女を求めたこと
今思い返してもあれは夢だったのではないか、そう思うくらい現実味のない一夜でした。しかし、はっきりと覚えているのは、次の日バス停で彼女を見送ったこと。そして肌が弱い私に残った彼女の爪痕とキスマークだけでした。